他ブログからの転用

急傾斜地崩壊対策工法について

2014-01-09 23:58:09 | 土木技術について


先日、当ブログへ「急傾斜地崩壊対策工法」についてお問い合わせをいただきました。
(同じ境遇の土木技術者の方々にご覧いただき、ありがたく思っております)
お問い合わせ事項については、ボクの経験から私見を述べさせていただきましたが、
つきましてはその質疑事項について、より詳細に(私の)見解を記事にしたく
たいへん失礼かと思いますが転記させていただき、本日の記事にさせていただきます。
(ご了承願います)

(はじめに)
急傾斜地崩壊対策については、従来の標準設計「待受け擁壁工法」(従来法)で
計画・実施されていましたが、
平成18年から国の通達により「衝撃力と崩壊土砂量を考慮した設計手法(土砂法)」
へと改定し全国施行されました。

では、なにが違うのか。以下に列記します。

(設計方針)
従来法
 (1) 標準設計を用いて土圧(土砂地山の場合は盛土部土圧)を考慮・安定確認する
    ※N値<15(Nc値<20)となるような頁岩も「土砂」として評価してます(砂岩は要相談)
 (2) 擁壁高さがH<8mとなる場合は地震時(水平震度0.12〜0.24)を検討する
 (3) 落石跳躍量⊿H=2.0mを考慮する
土砂法
 (1)、(2)、(3)については共通
 (4) 衝撃力(斜面をすべり落ちてくる土砂流が擁壁へ衝突する集中荷重)を考慮する
   ※崩壊スベリ円の最大崩壊深はDP≦2.0m(全国事例より)
                    土砂流(hsm)の高さは崩壊深の1/2
 (5) 崩壊土砂量を擁壁で補足したときの上載・背面荷重を考慮する


(急傾斜地崩壊対策工の荷重算定図の例です・・・)


このように、従来法では荷重条件3つのところ、土砂法では荷重条件が5つと増えました。
ようは、
「荷重を追加して安定条件を厳しくしたから(急傾斜で)もう標準設計は使えないからね」
「同じ地形・配置条件でも擁壁が前と比べて大きくなっちゃうけど、ごめんね」
ということです。

さて、本題に入ります(前置き長くてスイマセン)



・・・質問(転記 はじめ)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
急傾斜の待受け擁壁で、ポケット量を確保できる最少高さの擁壁だと、安定計算が不可になります。
捕捉量を満足したまま安定計算も満足させるためには、
・高さそのままで天端幅広げる
・高さそのままで下流法勾配緩くする
・高さそのままで斜面から離す
・高さ低くして斜面から離す
というようなことが考えられますが、これらの組み合わせはたくさんのケースが生じます。
最適案というのはどのようにして決定するものでしょうか。
・・・質問(転記 終わり)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

この質問に対し、ボクの返答です。

・・・返答(はじめ)・・・・・・・・・・・・・・
ご質問、ありがとうございます。
急傾斜崩壊対策の待受け擁壁の計画ということですね。
(問題)
・待受け擁壁の天端(落防柵)に崩壊土砂補足をした際の上載荷重と通常の擁壁背面土圧の安定ことと解釈します(違っていたらご指摘ください)
※衝撃力もありますのでその件もふまえて・・・
(回答)
●まず、天端へ崩壊土砂が満砂となりますと落防(擁壁天端)へ崩壊土砂の土圧が(試行くさび法)かかります。
そうすると天端に転倒モーメントが発生します。
ですから、擁壁を大きくするよりも、できるだけ堆積高さを低くするため、ポケットを広く確保したほうが有利で安定します(斜面から離す)。
●ポケット確保(斜面からの離隔を大きく)することの利点はもう一つ、「衝撃力」の緩和です。衝撃力は、斜面高と角度で大きさが決まりますので、ポケットを広く確保して、クッション(平場X)を大きくすれば減勢でき、擁壁への衝撃低減=擁壁断面小=施設構造小=工費が安い、となります。(簡単じゃないですが)
(結論)
急傾斜対策では、
◎とにかく斜面から擁壁を離す(擁壁へかかるすべての荷重を軽減する)ことが重要・最適案です。
住宅など斜面から離隔確保できない場合でも、住宅から1.5m離したところのギリギリまで擁壁を前に出し、最大限、離隔を確保することが重要です。

急傾斜対策では、これが最適となる案であるとボクは考えています。
・・・返答(終わり)・・・・・・・・・・・・・・・・・

偉そうにスイマセンでした(ご了承ください)・・・

そこで、「言わんとしたこと」をまとめたものがありますので添付します。
以前、作成した報告書(抜粋)です。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・                                       

では参考で
「土砂法」で設計し施工した「急傾斜地崩壊対策工」の実例をご紹介いたします。

設計図面(ケース1)-------------
(待受けの重力式擁壁の場合です)

(重力式擁壁工にて・・・斜面高H=20.3m(補足土量7.1m3/m、斜面角度33°)
  落石跳躍量⊿h=2.0m、衝撃力を緩和するため、衝撃を受ける位置を低い位置にしました)

ほんとは、
もっと擁壁を前に出して土砂補足ポケット確保の斜面切土を小さくしたかったんですが、
この現場の場合、斜面直前が「市道」であったため擁壁は前に出せませんでした。
したがって、やむを得ず斜面を切って土砂補足ポケットを確保・・・
でも、いま考えれば
「崩壊しそうな斜面法尻を切っちゃったら逆にアブねーんじゃねーの?」って思い直してます・・・
 (斜面の安定を考えると確実にマイナスですよね・・・)
 ※このへんについては以前、言及していますので以下を参照・・・
http://pub.ne.jp/kendo/?entry_id=4881850
以後、このへんのことに留意したいと考えてます。

さて、脱線しましたが、話を戻します(笑)

(ケース1)の実際の出来形写真がこちら・・・・




(擁壁の背面はこんな感じ。崩壊土砂を補足する平場(X)のポケットを確保します 
                          ちなみに、緑色の縦帯は通水マットですよ)
            

設計図面(ケース2)--------------
こちらはやむを得ずアンカー(E5-2)を使用しました。

(張コンクリート擁壁工(アンカー併用)にて・・・落石跳躍量⊿h=2.0m、
        斜面高H=30.35m(補足土量9.6m3/m)、斜面角度37°)
   
こちらも同じく斜面直前が「市道」であり、またそれにより落石跳躍量も確保できなかったため
それを満たすため擁壁はH<8mに・・・しょうがない、張コンクリート擁壁(アンカー併用)としました。

(ケース2)の実際の出来形写真がこちら・・・・




(背面はこんな感じ。擁壁が高い=土砂補足量も少さくなる=補足ポケットが小さくなる)


(補足ポケット確保のための斜面切土には簡易吹付枠工(緑化基礎工)をあてたりします)
 ※長大切土法面となる場合は安全率の確認が必要となりますので注意


いやー、今回の記事は長くなってしまいました〜スイマセン・・・

技術士試験の「簡潔に(10分で)説明せよ」の口頭試験では完全にOUTですね・・・OTL

尚、
今回のやり方(記事)に
「それはおかしいでしょ?」とか「もっと〜したほうがよい」など
技術的なご指摘・ゴベンタツ、議論などありましたらお知らせください。
ボクは「井の中の蛙」ですから、
ぜひともご指導いただきたいと考えております。